吉田医院院長 刑部利雄

今年も木枯らしとともに嫌われ者のインフルエンザの流行する季節がやってきました。
インフルエンザは、カゼ症候群のひとつで、現在知られているのはインフルエンザウイルスA,B,C型の3種類の感染によるものです。この中でA型ウイルスは時に大流行を引き起こし、多くの死亡者が出ることもありま
す。古くは1918年に流行した「スペイン風邪」。全世界で4000万人もの人が犠牲になったといわれています。その後も1957年にアジア型、1968年に香港型、1977年にはソ連型が世界的な流行をしています。
B型ウイルスはA型に比べると流行は大きくないものの地域的な流行という面では、やはり注意が必要な病原体です。これらに対してC型ウイルスはほとんど流行しないとされています。

インフルエンザウイルスは直径が1nm(1万分の1ミリ)というとても小さな病原体であるため、患者からの咳などで空気中に飛
散しそれを鼻腔などに吸入することによって感染するわけです。またこのウイルスはしばしば突然変異を起こし、抗原性が変わるために何年かに一度の大流行が起こるといわれています。
 インフルエンザの特徴的な症状としては、 突然の悪寒を伴う発熱、関節痛・筋肉痛などのほかに普通の風邪の症状としての 鼻水、鼻づまり、咳、のどの痛みがみられます。また気管支炎や肺炎などを合併することも少なからずあります。乳幼児では時に脳炎を合併することもありますし,高齢者や呼吸器系・心臓などに基礎疾患がある人では肺炎を起こして重症化することもありますので、注意が必要でしょう。
 それではインフルエンザに罹らないためにはどうすればよいでしょう。
従来から言われているように、 うがい、手洗い、十分な休養、マスクの着用、人ごみを避けるなどはすでにご存知でしょうが、積極的な予防法は流行前に予防接種をすることといわれています。このワクチンの有効性は70~80%とされています。またインフルエンザウイルスは湿気に非常に弱いため暖房で乾燥しがちな室内に適度な湿気を保つことも必要でしょう。
 万一インフルエンザに罹ってしまったら、早めに医療機関を受診して治療することをお勧めします。インフルエンザの治療は症状に応じた対症療法が基本となりますが、平成10年11月から 塩酸アマンタジン(シンメトレル)という薬がA型ウイルスに対する薬剤として厚生省で認可されています。また平成12年早々にはA型・B型に効果が認められる ノイラミニダーゼ阻害剤・ザナミビル(リレンザ)が抗インフルエンザ薬として認可されるという情報もあります。いわばインフルエンザの特効薬が世に出ようとしているわけです。ただこれらの薬も、発病から36-48時間以内に服用しないと効果は期待出ませんので、「 玉子酒を飲んで布団をかぶって2・3日様子をみよう。 」というのはあまり感心しません。
 いずれにしろ、普段から体調を整え、十分な睡眠と休養を取って、インフルエンザに負けない体力を養っておくことが肝要でしょう。
 なお、国ではインフルエンザの一般的な予防法・流行状況等に関するホットラインを設けて皆さんの疑問に答えています。平成11年12月1日から平成12年3月31日までの祝日を除く月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まて゛電話 03-5285-1231ファクシミリ 03-5285-1233 ・ E-mail:influenza@nih.go.jpで受け付けています。

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